今回は私が毎月購読している雑誌PHPに寄稿された、医学博士 精神科医の榎本稔さまの記事を紹介します。
以下、寄稿文の要約です。
長年、医者をしていると、「社会が変わると病気も変わり、医療や病院も変わる」と実感します。
2013年には、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の四大疾病に精神疾患が加えられて五大疾病と定義されました。
また、近年にWHOが発表した患者数の一位は精神疾患であり、心の病を抱えて苦しむ人が増えています。
私は、心の病は「沈黙の病」でもあると考えています。
私のクリニックに通ってくる患者さんたちには、喜怒哀楽があまり見られません。
笑うことだけでなく、ほかの感情も表に出ることが少ないのです。
患者さんの中には、ずっと黙り込んでしまって人とのかかわりがほどんどない方までいます。
心の病は社会がつくり出していると私は感じています。
ITの進化によって現代社会はすさまじいスピードで変わって行っています。
その変化に人間のほうがついていけなくなっているのです。
中略
人と接する機会がなければ、人間関係を学ぶこともできません。
それでも学校や職場に行くと、他者との協調や円滑なコミュニケーションが求められます。
これでは、とまどうのも無理のない話です。
結果、不登校や引きこもり、スマホ依存が急増し、職場でうつ病になる人も増えて、社会問題化しています。
中略
笑って過ごせるようになるためには、人と集うことが一番だと私は考えます。
バーチャルな接触ではなく、実際に顔を合わせるリアルな集まりです。
ハイキングでもいいし、どこかに飲みに行くのでも、おしゃべりするのでもいい。
職場や家庭以外で、他人と触れ合える場所に行ってみること。
人と会えば話をしますし、そこでは自然に笑いもうまれます。
中略
笑うことで、心は動きます。
生物学的には、笑うことによって「幸せホルモン」とも呼ばれるエンドルフィンという神経伝達物質が脳内で分泌され、NK(ナチュラルキラー)細胞を活性化させると言われています。
それによって、血行が良くなったり、免疫を高められたりという効果があります。
中略
人との接触が少なくなると、視野が狭くなります。
視野が狭くなると、孤独感によって不安になったり孤立したりして、心が蝕まれる危険性も増えてきます。
人と集い、人間関係をつくることに慣れ、自分の居場所を築くこと。
それが人生を豊かにし、笑って過ごせる一助となるはずです。
2024/12/13