ビジネスに関する本を読んでいたら、古い価値観や習慣について書いた文章があり、それが面白い文章でしたので紹介します。
四匹の猿
ココヤシの木の下に四匹の猿がいた。
しばらく待ってもココナツの実が落ちてこないので、一匹の猿が実を採ろうと木に登ったが、半分まで登ったところで電気ショックを感じ、慌てて地面に降りた。
他の猿も動揺して恐怖にかられた。
さっきの猿はもう一度、登ろうとしたが、また同じ結果となった。ほかの猿も一匹ずつの登ってみたが、電気ショックを受けて実を採ることはできなかった。
まもなく猿は、木に上るのはとても危険だと理解するに至った。
この経験から、ココナツに関しては採りにいくのではなく、重力の法則で落ちてくるのを待つことが唯一のビジネスモデルとなった。
四匹の猿は、これを自分たちの組織の方針として、従業員向けの手引きや研修プログラム、業績評価基準、組織構造に組み入れた。
彼らの理解が正式な慣行となり、どうしてココナツの木に登ってはいけないのか、疑問に思うこともなくなった。
やがて四匹は、別の木に移動となった。
その木には電気ショック装置はなかったので登ったとしても問題は無かったが、彼らは登らなかった。
環境に非線形の変化が起きたのに、猿たちは以前の環境下で決定されたとおりの行動をした。
電気ショックの経験を、新しい木にも適用したのだ。
その後、経営陣が四匹のうち一匹を異動させ、代わりに電気ショック経験のない新しい猿が一匹やってきた。
その猿がココナツの実を採ろうと木に登り始めると、ほかの猿たちが引きずりおろした。
新しい猿は何度も木に登ろうとするが、ほかの猿たちが止めに入る。
まったく違う考え方をする新しい猿に、残りの猿たちが木に登ることは許されない行為だと説明する。
重力こそが、唯一のビジネスモデルなのだから。
「じゃあ、待つしかないと言うんですか?」と新しい猿が尋ねる。
「風が強い日に、ココナツの実が落ちてくることを願うしかないんだ」と別の猿が答える。
結局、新しい猿もどうして木に登ることが危険で許されない行為なのか、よくわからないまま言われたことを受け入れる。
電気ショックを体験したことはないのに、「木は登るものではない。もし登ろうとしたら強い反対に遭うのだ」と理解する。
こうして、他の猿とは違うアイデアや過去の経験を持つ新しい猿も、周りの要求に合わせて古い考えに適合していく。
猿は一匹ずつ移動していき、やがてすべて新しい猿に入れ替わったが、彼らは電気ショックを受けたこともないのに、ココヤシの木に登るのは危険だと学習する。
こんな風に、環境がつくった古いロジックが、すでにその環境には即さなくなっているのに残っていくのである。
非線形な変化が新たな魅力的な可能性を秘めたチャンスをもたらしているというのに、過去の力が強すぎて、結局、そのチャンスは失われてしまうのだ。
だからこそ、組織は選択的に忘れる訓練をすることが重要となる。
ここで忘れるべきは、もう役に立たなくなったことである。
あるいは、今も過去のビジネスにとって価値のあることであっても、それが新しいビジネスを抑制するような効果は遮断する方法を考えるべきだとしている。
2023/6/22
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