今回は、最近よくSAPコンサルタントを育成するためにはどうすれば良いかという相談を受けるのでそのことについて書いてみます。
最近、大手コンサルファームや中堅SAPベンダ、NPO法人など、多くのところからSAPコンサルタントを育成するためにはどうすればよいかという相談を受けます。
1つに、新型コロナウイルスの広まりと共に自社ビジネスの将来に不安を感じ、またジョブ型雇用・DX人材不足などから、社員の再教育・人材投資などが今までにない盛り上がりを見せていることからの影響かと思います。
今までは既存ビジネスに力を入れ、市場を獲得することに力を注いでいた企業が、異業種への進出、新たなビジネスの展開などに備えるために、社員が今持っている技術だけではなく新たな技術を身につけさせようという動きです。
その流れの中で、SAPコンサルティング事業は収益率が高く、人材が不足している市場なので各社が目をつけて人材育成に取り組んでいるようです。
しかし、人材不足からも分かる通り、SAPコンサルタントの育成は難しく過去からずっと短期での育成ができない分野でした。
その中で、ECHが行ってきた社員教育の話が業界内で広く伝わっていったのだと思いますが、様々なところから「教育講座の依頼」にとどまらず、社員育成をするためのノウハウを教えて欲しいという声がかかるようになりました。
SAPコンサルタントの育成は普通のIT技術者の育成とは異なり、独特の育成手法を使わないといけません。
IT技術者であれば概ね以下をポイントとして育成します。
・専門の技術知識
・実機を使う操作知識
・障害対応のためのケーススタディ
これらを一通り習得すれば、現場に出てもチームを支える力となり働くことができます。
SAPコンサルタントの場合は上記能力に加えて以下の能力も必要とします。
・仕事がどのように行われているかの業務知識
・1つの事象から影響を受ける範囲を想定し、どのような機能が関わるかを探し出す能力
・相手が言っていることを理解し、理解できない部分については相手から詳細に渡り情報を聞き出す能力
・簡単な言葉のみを使った説明能力
・相手から情報を出してもらえるコミュニケーション能力
IT技術者に必要な能力は本屋に行けば概ね必要な情報は揃っており後は時間をかければ習得できます。
SAPコンサルタント特有の能力はどれも本屋で1つの本を買えば身につくものでなく、本人の今の資質を見極めて教育していかないと身につかない能力です。
私が相談を受けたときに相手へ言う育成ノウハウは以下が中心となります。
・現場へ出してOJTで教えることができるものではない
・現場へ出して小さな満足感を得ると、そこで小さくまとまってしまい、お客様の色々な要求に応えることができるコンサルになれない
・習得した知識が本物かどうかを見極めるためにデモなどを行い、貯める知識ではなく出せる知識となっているか確認する
・出せる知識を習得するための学習方法を指導する
・現場は経験が必要なので、実機の操作を何度も繰り返し実務を想定したシミュレーションする
・どこでも使うような機能は、何も資料がなくても全て実機操作ができるようになる
・SAPシステムがゲームのように面白く感じられるまで使い込ませる
この育成ノウハウを外に出さず、自分の中にしまっておくことを助言してくれる人もいますが、そのような小さな視点で物事を考えると自分一人は成功しても、会社や周りの人を巻き込んだ成功は望めません。
私はこの業界に入った時から「これはおかしい、私が業界を変える」と思っていることがあります。
SAPを導入しているユーザから「SAPは使いずらい」と時々聞きます。
でもよく話を聞いてみるとSAPが持つ素晴らしい機能を使い切れていないことが多いです。
また、ユーザの要求がSAPシステムに備わっている機能かどうかわからない時に「お客様から報酬をもらっている時間でSAPの機能調査を行う」といったこともおかしな行動と思います。
「そもそも、コンサルタントなのに機能を知らないのか」という事です。
これではユーザは「SAPは使いずらいしお金がかかる」という印象を持ち、結果としてSAPシステムは広がりません。
SAPシステムの良さをSAPコンサルタントが熟知し、ユーザに合った、ユーザが満足するシステムを作り上げないと自分たちの仕事が将来無くなるのです。
そういった思いから、私は自分が今までに得てきたノウハウを同業の方にも伝えています。
SAPシステムの良さが多くのコンサルタントからユーザに伝われば、将来SAPを使うユーザが増え、結果として私自身もやりがいのある仕事が増えるという思いです。
2021/10/13
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